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労働契約の条件、試用期間や内定取消、身元保証人について労働基準法の解説

労働基準法で定められている労働契約に関する解説です。労働条件や内定の取消や辞退、試用期間、労働契約の終了(更新)についての取り決めなどは法律で定められています。
また、採用されてから会社に損害を与えてしまった場合の損害賠償についても、解説します。

  1. 労働契約の成立と条件
  2. 内定の取消・辞退
  3. 試用期間の延長や本採用拒否
  4. 労働者への損害賠償と身元保証
  5. 労働契約が期間定めがある・ない無期の場合の更新や終了

労働契約については、労働契約法の解説も参考にしてください。

労働契約の成立と条件

労働契約は、事業主と個人との間に交わされる契約の中で、唯一「消費者契約法」の適用がない契約です。そのため、労働基準法で労働者を手厚く保護しています。

労働契約が成立するとき

求人募集に始まって、労働者が応募し、面接や審査を経て採用が決まります。労働契約は口頭でも成立する諾成契約(「申込」と「承諾」の意思表示で成立する契約のこと)ですから、採用内定の通知(書面・口頭・電話でOK)が労働者に届いたときに、労働契約が成立します。労働契約書の作成は義務ではありません。

労働条件の明示

労働条件は、労働基準法に違反しない範囲で有効です。ですから、「ウチの会社は残業代は出ないから」「割増賃金は1割増しだよ」というものは認められず、その部分に関して無効になります。最低賃金も、各都道府県によって異なりますので余りにも低い時給だな、と感じたら、調べてみましょう。労働契約を結んだ場合、労働契約書の作成は義務付けられてはいませんが、労働条件は書面で明示(就業規則の中で明示してもOK)しなければなりません。

必ず書面で明示しなければならないもの

会社に定めがある場合に明示するもの(書面or口頭)

実際に働き出したら、労働条件と違っていた場合

求人広告に載っていた条件や、採用の時に言われていた条件と、実際の条件が異なっていた場合は、会社に対して、条件どおりにしてくれ!と、要求することができます。

また、会社が要求を受け入れてくれない場合はスグに、労働契約を解除できます。その場合、損害賠償請求をすることも可能です。

もし、就職のために引越しをしてしまっていた場合、契約解除から14日以内でしたら、その旅費を会社に請求することができます。

以前は、賃金見込み額を高めに設定し求人広告をすることもありましたが、現在は、見込み額の記載はできません。

内定取り消しや辞退について

内定取り消しの正当理由

「内定=労働契約の成立」です。ですから、「内定の取消=労働契約の解除」ということになります。

会社からの内定取消は、合理的で正当な理由がなければ、いけません。しかし、実際に労働しているわけではないので、通常の解雇理由より、ゆるやかな理由でも、解除が認められています。内定は、解除権留保付労働契約であるといえます。また、内定取消をされた場合に、解雇予告手当ての請求はできません。

会社からの内定取消の合理的・正当な理由とは?

  1. 会社が経営不振になり、既存の従業員を解雇しなければならなくなった
  2. 学生が留年した
  3. 刑事事件等の犯人として逮捕された
  4. 労働者の経歴詐称が判明した
  5. 労働者が病気になって、会社の業務を遂行できないと判断した

など。です

内定取り消しについての最高裁判例

(昭和54年7月20日最高裁判例)

「採用内定の取り消し事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる

労働者から内定辞退したい場合は?

労働者から内定辞退をすることは、

自由です。但し、2週間の予告期間が必要です。(これは、通常の期間定めのない労働契約の解除と同じです。なるべく、正式採用日の2週間以上前には会社に通知しましょう)

試用期間の延長や本採用の拒否

試用期間は就業規則で定める

会社に入社すると、最初の2,3ヶ月間は試用期間だよ。と言われる場合があります。基本的には、労働条件・権利義務に関しては、正社員と同じです。

試用期間(就業規則で定める)

  1. 2~3ヶ月くらい。期間を定めないことは許されない。また、1年を越えるのも×。
  2. 試用期間を設けるかどうかは会社の自由です
  3. 退職金の適用期間に含めるかどうかも、会社の自由です
  4. 試用期間は短縮することもできます

試用期間を延長する条件

試用期間を延長するときの必須条件

会社が休業していたり、本人が長期休暇・欠勤が多い場合で、以下の条件にあてはまる場合です。

  1. 就業規則に試用期間の延長についての定めがある。又は、試用期間の延長が慣行となっている
  2. 労働者本人が期間延長を同意
  3. 延長期間が定められている
  4. 労働者の適性に疑問がある

本採用を拒否していい場合

  1. 勤務成績が悪すぎる場合
    無断欠勤・遅刻、協調性の欠如、能力が低く仕事ができない
  2. 虚偽申告
    提出書類・採用面接時にウソをついていた。その程度が重大
  3. 会社が経営不振
    正社員を解雇しなければならなくなった

※試用開始から15日以上経っていたら、解雇予告の対象になります。

労働者への損害賠償と身元保証

労働者が会社から損害賠償を請求される場合

労働基準法では、違約金や損害賠償額の予定をしてはいけないことになっています。(Ex.デリヘルや風俗関係のお店などで、よくあることですが、遅刻したら、罰金3万円、欠勤したら、罰金5万円。5年は働いてもらう・もし、途中でやめたら罰金50万円など。)このようなことは、禁じられており、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。

しかし、実際に会社が損害をこうむったときに、損害賠償請求をしてはいけない、ということではありません。

労働者が会社から損害賠償を請求される場合

  1. 労働者が一方的に退職してしまったために、会社の業務が著しく滞った。
  2. 横領した
  3. 居眠りなどで事故をおこした。
  4. 商談などをスッポカシたため、取引先の信頼を失った。
  5. 故意に、会社の備品を破壊した。

など。です

※賃金から天引きすることはいけません。賃金を全額支払った上で、損害賠償請求をしなければなりません。

身元保証人の責任

身元保証契約を交わすと、労働者が会社に損害を与えてしまった場合で、労働者が支払えなかったり、逃げてしまった場合に、代わって賠償責任を負います
責任重大なので、以下のような決まりがあります。

  1. 身元保証人の保証期間
    期間定めがない場合は、契約成立の日から3年間
    期間を定める場合は、5年間まで(それ以上の契約は5年と看做す)
    更新するときも、5年。
  2. 会社の通知義務
    労働者の勤務態度に問題があり、身元保証人に責任が出そうなとき
    仕事内容・勤務地が変更したとき

⇒この通知を受けたときに、「もう、身元保証はイヤだな・・・」と思ったら、身元保証を解約することができます。内容証明で通知しましょう。

 

労働契約期間と、その終了

有期労働契約についての決まりごと

有期労働契約については、特に問題が多いため、以下のような決まりがあります

『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』
    (平成15年厚生労働省告示第357号より)

5年の契約が認められる有期雇用契約

期間を定めて雇用するとき、あまりにも長い期間の契約はできません。通常は長くて3年です。特別に5年契約が認められるものは、以下のとおりです。  

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士のいずれかの資格を有する者
  3. システムアナリスト試験又はアクチュアリー試験に合格している者
  4. 特許法に規定する特許発明の発明者、意匠法に規定する登録意匠を創作した者又は種苗法に規定する登録品種を育成した者
  5. 大学卒で実務経験5年以上、短大・高専卒で実務経験6年以上又は高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者、鉱工業の技術者、機械・電気技術者、システムエンジニア又はデザイナーで、年収が1075万円以上の者
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1075万円以上の者
  7. 国等によりその有する知識等が優れたものであると認定され、上記に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める

労働契約の終了(解雇や退職)

期間定めのない契約の終了

普通の正社員は期間定めのない契約です。そのため、解雇・自主退社・定年退職などが、労働契約が終了するときになります。

  1. 会社からの解雇
     整理解雇や懲戒解雇など、正当な理由があれば、OK。でも、不当解雇が多い!
     解雇予告を30日前にしなければならない(労働基準法第20条)
  2. 労働者からの退職
     退職したい日の2週間前に会社に申し出る(民法627条)

期間定めのある契約の終了

契約社員やパート、アルバイトなど、期間を定めて雇用するケースが多く見受けられます。

  1. 会社からの解雇
    ・期間中の解雇は原則、できません。
    ・やむをえない理由がある場合のみ、できる
    ・解雇予告をしなければならない
    (通常は30日前までに予告が必要ですが、6ヶ月以上の期間定めの場合で、その間の報酬額が決まっているようなときは、民法626条によって、解雇予告は3ヶ月前までにすることが必要な場合もあります。1年契約のアルバイトとかフリーターなどは対象にはなりません。たとえば、あるプロジェクトのために1年契約をして、その報酬として○百万円、などという報酬の決め方をした場合などです。)
  2. 労働者からの退職
    ・期間中の退職は原則、できません。
    ・でも、やむを得ない理由がある場合のみ、できます。

※やむを得ない理由で解除する場合、相手方に損害が生じてしまう場合は、 損害賠償の対象になル場合がありますので、注意しましょう。(民法628条)

また、雇い入れの目的に照らして、契約期間を必要以上の細切れにしないよう配慮しなければなりません(実際は半年くらい働いてもらうつもりでも、契約期間を2ヶ月として、解雇予告手当ての支給を逃れようとしている企業がありますが、そのような企業は契約期間の見直しをしたほうがいいでしょう)