解雇について~労働基準法の解説
労働基準法では解雇の制限、解雇予告手当てについての規定があります。途中解雇ルールが明記されましたが、現在は平成19年に施行された労働契約法が解雇について規定しています
解雇の種類
普通解雇
- 会社の経営が危機的で、人員整理をしなくてはいけないとき(整理解雇)
- 無断欠勤が続くなど、労働者の勤務態度が著しく悪いとき
- 服務規律違反が重大であり、懲戒解雇に準じるようなとき
- 心身に障害などがあり、業務を遂行できないとき
整理解雇
整理解雇は、会社の経営上の理由により、特に落ち度のない労働者を辞めさせるリストラのことです。そのため、具体的かつ合理的なものでなければ認められません。つまり、整理解雇の4要件のうち、ひとつでも欠いたら、「解雇権の濫用(不当解雇)」としてその解雇は無効と判断されます。
整理解雇の4要件
- 整理解雇の必要性
どうしても人員を整理しなければならない会社の経営上の理由があること。
(経営不振を打開するため○、生産性を向上させるため×) - 解雇回避の努力
希望退職の募集、出向、配置転換、一時帰休など、会社はできる限り解雇を回避する努力をしたけれど、解雇することを回避できないとき。 - 整理基準と人選の合理性
人員の選定について、客観的資料が存在すること。評価者の主観に左右されないこと。全社員を対象としていること。 - 労働者・労働組合との協議 解雇の対象者および労働組合に対して、整理解雇について十分に協議をし、同意を得る必要があります。
諭旨解雇・懲戒解雇
諭旨解雇や懲戒解雇とは、会社の秩序を著しく乱したり、違反したり、その行いが会社に対して多大な損害を 与えたときなどに、制裁として行われる解雇 (退職金は受け取れないことが多い)のことです。
諭旨解雇
懲戒に該当するようなミスや行いがあった場合に、会社から自ら退職をするように諭され、表面上は自己都合退社という扱いにしますが、実質は解雇であるようなものいいます。
懲戒処分での解雇をするには
懲戒とは、労働者が企業秩序に違反した場合に、使用者が制裁として労働者に課すもので、 懲戒処分の種類には、以下のものがあります。
- 戒告・訓告
書面での注意(始末書の提出など) - 減給
賃金の減給 - 出勤停止
就労の一定期間の停止(その期間は無給) - 降格
職務上の地位・役職などの降格 (職務変更に伴い、多くの場合は賃金が減少) - 懲戒解雇
雇用契約の終了(通常、退職金は支給されない)
会社が懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒規定がなければできません。
懲戒規定は、どのようなときに懲戒処分を行うのか、また、その事由に対する懲戒処分の種類についての規定です。この規定にしたがって、懲戒処分が行われます。
そのため、就業規則に定めのない事由による懲戒処分は「懲戒権の濫用」と判断されます。そのような懲戒処分は、無効とされます。 就業規則に定めのない事由による懲戒解雇は、不当解雇となり得ます。
退職勧奨、退職強要~実質解雇の退職へ
退職勧奨とは、正式な解雇通告ではありませんが、暗に退職を勧めるもので、労働者は拒否できます。正当な解雇理由なしに行われるものに不本意ながら退職願を書かされたり、退職に合意することのないように気をつけてください。
退職勧奨されたときの対処法はこちら
>> 不当解雇の対処法
退職勧奨が度をすぎてくると、パワハラになり、退職強要と呼ばれ、不法行為になります。長期にわたる執拗な退職強要にあって鬱になったり精神的に追い詰められた場合は、慰謝料請求等もすることができます。
不当解雇を防ぐための解雇ルール
不当解雇に対する明確なルールがなかった
平成16年の労基法改正までは、30日前に解雇予告をするか、突然解雇をしても解雇予告手当を支払えば、原則として解雇することができるとされていました。(例外として、業務災害によって休業した者や、出産前後に休業している女性を解雇することは禁じています(第19条))
そのため、解雇を言い渡され、解雇予告手当て等を受け取った労働者は退職を余儀なくされおり、もし、自分の解雇理由に納得できない場合は、裁判で争わなければなりませんでした。
労働基準法に解雇ルールが明記されたことによって労基署が介入できるようになった
平成16年労働基準法の改正が行われ、「解雇権の濫用(不当解雇)」を防ぐため「解雇ルール」が規定されました。そのときに追加された条文が以下のものです。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、 その権利を濫用したものとして無効とする。」(労働基準法第18条の2(現在は削除))
これは、それまでの最高裁の判例を法律に明文化したもので、解雇権の濫用を予防することを目的としています。さらに、会社の就業規則に解雇理由を具体的に明記することが義務付けられました。
また、解雇を予告された労働者は、予告がされた日から退職の日までの間に、使用者に対し、解雇の理由についての証明書を請求できることになりました。
この法改正により、解雇の理由について労働基準監督署は企業に対して介入することができるようになりました。
解雇ルールは労働契約法に託された
そして、平成19年11月労働契約法が成立しました。
解雇ルールについての条文労働基準法18条2を削除し、その条文はそのまま労働契約法第16条に移されました。労働契約の締結や解除について詳細に定められた労働契約法が成立しました。
不当解雇撤回の代わりに金銭代償を請求できるようになった
改正された労働基準法や労働契約法、「合理的な理由もなく社会通念上も相当と認められない場合、企業は解雇権を行使出来ない」という解雇ルールができたことによって、職場復帰の代りに一定金額を企業に支払わせるよう、裁判所に請求できるようになりました。
企業の就業規則に解雇理由を明記させることになり、不当な解雇であることが明らかになっても、解雇を裁判で争っても、現実問題として、職場復帰は難しいことが多いので、お金で解決する道を選択する労働者が多いです。