労働契約法で定められた、労働契約成立と労働条件
判例を基に労働者を守るべく立法化された労働契約法です。この法律で、「労働者」として保護される人、されない人の違いは何でしょうか?
労働契約時、変更時に使用者と労働者が努力すること
労使間の努力義務
使用者・労働者ともに、労働契約時や変更時には以下のことに留意することとされています。これらは民法や労働基準法でも規定されていますが、個別労働関係紛争では、特に権利濫用がよく見られるために、あえて規定されました。
- 労働契約締結・変更時には、現実の力関係は不平等が存在しているので、お互いに意識をもって対等であるように務め、就業の実態に応じて均衡を考慮すること。
- 労働契約の内容は、労働者の仕事と生活の調和がとれるように配慮した契約内容にするべき
- 信義誠実に行動し、権利濫用をしてはいけない。
また、以下のことにも留意しましょう
- 労働者が労働条件をしっかりと理解できるように説明することも必要。労働条件の内容を把握しないまま雇用関係が始まり、お互いの認識の違いが原因で個別労働紛争が起きています。
- 労働契約の条件はなるべく書面で確認しあうこと(締結時も変更時も)。特に有期労働契約の場合には、契約期間が終了したときに契約更新されるのか?どのような場合に更新されるか?などもはっきりとしておきましょう。
安全配慮義務
労働者の生命や身体・心身などの安全確保に配慮しなければならないりません。信義則上、使用者は労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているとされていますが、民法の規定からは明らかになっていないため、この「安全配慮義務」を使用者が負うことを規定しました。
安全配慮義務についての判例
- 作業中の事故 ⇒ 陸上自衛隊事件(最高裁昭和50年2月)
- 宿直時の強盗 ⇒ 川義事件(最高裁昭和59年4月)
労働契約が成立するとき
労働者と会社(使用者)は対等な立場を保持して、契約締結しなければなりません。労働基準法に違反するような条件での契約は無効になります。また、就業実態に則したものでなければなりません。
その上で、労働契約は、労働者と使用者が『合意』すれば、成立します。書面交付がなくても合意があれば契約成立ということになります。
労働条件については、就業規則がない場合には個別に労働条件を合意します。もちろん、就業規則があっても個別労働契約で条件を決めることは可能です。
就業規則がある会社で、労働条件はどう決まる?
多くの企業では、就業規則で労働条件を規定していることが多く、労働契約法で、その取り扱いを明確にしました
就業規則があるとき
合理的な(まともな)内容の就業規則を労働者がいつでも見ることができるような状態にしていた場合は、就業規則に記載された労働条件が労働者の労働条件になります。
(労働契約成立時に就業規則があることが必要です。すでに労働契約がなされている状態で新たに就業規則を作成した場合にはあてはまりません)
使用者が就業規則を隠していたり、労働者が見たくても見ることができないところに保管していた場合は、就業規則に記載された労働条件は労働者の労働条件にはなりません。
就業規則の労働条件とは違う内容で合意したとき
個別に合意した労働条件の内容が、その労働者の労働条件になります。
ただし、就業規則の労働条件よりも労働者にとって不利益な内容の場合は、就業規則の労働条件内容まで引き上げます
法令や労働協約に反する就業規則の場合
このような内容の就業規則上の労働条件は無効になります。
就業規則と労働条件の裁判所の考え方
就業規則は、①内容が合理的、②周知されている、ならば、労働条件として適用されます。労働条件の不利益変更を伴う就業規則の変更などについても、状況にあった合理的な変更であれば認められるとされています(労働契約の変更参照)。労働契約法の元になった、最高裁判所の判例をそれぞれわかりやすくまとめてみましたので、参考にしてください。