クレジット債権管理組合事件~パワハラ被害者勝訴判例
パワハラ概要・請求理由
被害者:クレジット債権管理組合の従業員であったAとB
クレジット債権管理組合の業務遂行会社代表取締役の夫へ:
福岡事務所の全従業員の前で、同事務所の所長が横領をした事件を告げた際、被害者ABらも関与しているはずなどと告げ、被害者ABらの名誉を毀損した不法行為による損害賠償
クレジット債権管理組合の業務遂行会社へ
一連の違法な自宅待機命令および業務命令によって退職を余儀なくされたことを理由として、不法行為による損害賠償
クレジット債権管理組合へ
退職金の請求
裁判の結果。慰謝料額
一部容認
- クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社の代表取締役の夫:
被害者ABらそれぞれに対し慰謝料30万円 - クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社:
被害者Aらそれぞれに対し慰謝料100万円 - クレジット債権管理組合:
被害者Aに対し退職金85万円、被害者Bに対し退職金約97万円
判旨(違法性、慰謝料請求)
○クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社の代表取締役の夫の不法行為について
福岡事務所の所長の横領が発覚した際、クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社の代表取締役の夫は、被害者A被害者Bを直接名指しし、断定的な表現で「お前やっただろう」と言った行為は、さしたる根拠もないのに憶測に基づき、被害者ABらの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損した違法な行為で、不法行為を構成することは明らかである。
この不法行為により被害者らの被った精神的苦痛を慰謝するための金額は、その表現方法やその他の諸般の事情を考えれば、被害者ABらそれぞれに対し金30万円が相当である。
○クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社について
1)自宅待機命令の違法性
クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社の被害者ABらに対する自宅待機命令は、さしたる根拠もないのに憶測に基づき、被害者ABらが福岡事務所所長の横領に加担していると疑い、被害者ABらの証拠隠滅工作を防止する目的で発したものであり、それにしても、被害者ABらのみに限定して自宅待機命令を発する合理的な理由は見出しがたく、その業務命令権を濫用して発した違法なものであるというべきである。
2)業務命令の違法性
被害者ABらに発した業務命令は、東京研修を受けさせる目的のもとになされたというよりも、被害者ABらの横領事件への関与を疑い、さしたる根拠もないのに憶測に基づき、被害者ABらを福岡事務所から排除し、横領事件に関与しているかどうかを調査する目的の下に行ったものであると認定するのが相当であり、業務命令権を濫用して行った違法なものというべきものである。
3)業務命令と被害者ABらの退職との因果関係
一連の違法な業務命令、また、組合の誠意のない対応に対し、被害者ABらは、もはやこれ以上組合の職員として勤務することは困難であると考えたうえで、退職届を発送せざるを得なかったものと認めるのが相当であり、一連の違法な業務命令と被害者ABらの退職との間には相当な因果関係があるというべきである。
4)クレジット債権管理組合の業務遂行を行う会社の責任
会社は、自宅待機命令、業務命令およびその後の各業務命令をおいて、被害者ABらの退職を余儀なくさせたものであり、また、少なくとも過失があったというべきであり、被害者ABらの損害を賠償すべきである。
5)慰謝料額
会社側の一連の違法な行為によって退職を余儀なくされた被害者ABらの精神的苦痛を慰謝すべき金額は、被害者ABそれぞれに対し金100万円をもって相当と認める。
○組合に対する退職金請求について
被害者ABらの退職は、自己都合による退職とは言えず、組合側にはやむを得ない業務上の都合による解雇と同視すべき帰責原因があると言うべきであるから、会社都合による解雇に相当する退職金を支給するのが相当である。